開業前にプライベートでパソコンを買ったんですが
事業でも使うので経費にしたいんです。
どうしたらいいですか?
開業届を提出する前に、パソコンを買っていて、開業後に事業として使うという方は多いのではないでしょうか。
パソコンを事業用の資産にして、経費にすることはできますが、ちょっと「ひと手間」が必要です。
10万円超のパソコンは開業費にはならない
「開業前に支払った開業準備に要した費用は、開業費にできる。」この話は、みなさんご存じだと思います。
よく「パソコンも開業費ですか?」と質問されますが、ちょっと違います。
10万円を超える、かつ、使用期間が1年以上のものは、固定資産になり、開業費には含まれません。
10万円以上のパソコンの場合、固定資産の工具器具備品という勘定科目に計上することになります。
開業前に取得した固定資産の取得価額
固定資産を帳簿に計上するには、まず、取得価額を算定する必要があります。
開業【後】に取得した固定資産であれば、基本的に、購入価額=取得価額で良いのですが、開業前に取得してプライベートで使っていた場合は、ひと手間かける必要性があります。
開業前のいつ取得したかによって対応がわかれます。
・開業日より半年以内に取得していた場合:影響なし
・開業日より半年以上前に取得していた場合:影響あり
具体例
具体例を出して、計算してみましょう。
パソコンの購入日:2022年2月1日
パソコンの購入価額:20万円
開業日:2023年12月1日
(1)非業務用資産の耐用年数
業務用の耐用年数×1.5で算定します。
パソコンの耐用年数は、4年のため、4年×1.5=6年
(2)非業務用資産の償却額の累積額
算定方法は、(購入価格ー(残存価額×10%))×(1)で算出した耐用年数の旧定額法の償却率×非業務期間
旧定額法の償却率は、国税庁のHPに出ています。
今回の場合は、0.166です。
なお、非業務期間について6カ月未満は切り捨てします。
今回の場合は、2022年2月~2023年11月までの1年10カ月ですので、非業務期間は2年となります。
ということで計算してみると
(20万ー(20万×10%))×0.166×2
=(20万ー2万)×0.166×2
= 18万×0.166×2
= 59,760円
(3)業務開始の時の未償却残高
算定方法は、取得価額ー(2)の金額。
計算してみると
20万円-59,760円
=140,240円
というわけで、なかなか長い道のりでしたが、開業日前に取得した今回のパソコンの取得価額は、140,240円となりました。
固定資産を経費にする方法
10万円以上のパソコン(固定資産)を経費にするためには、期末日に減価償却という処理が必要です。減価償却をしてはじめて、経費になりますので、この処理を忘れないようにしてくださいね。
個人事業主の場合、減価償却の方法には、いくつか選択肢があります。
①普通償却
②一括償却資産
③(青色申告の方のみ)少額減価償却資産の特例
どれを選択するかによって、減価償却費、つまり経費にできる金額が変わってきます。それぞれ条件がありますので、確認して選択してください。
なお、会計ソフトを利用されている場合は、固定資産台帳に登録すると、自動的に減価償却費を計算してくれますので、忘れずに登録しておきましょう。
①普通償却
これがオーソドックスな計算方法。資産の取得価額を耐用年数で割って、毎年減価償却費として費用計上していきます。
パソコンの法定耐用年数は4年ですので、取得価額を4年で割った金額が毎年の減価償却費となります。
②一括償却資産
取得価額が10万円以上20万円未満の減価償却資産の場合、一括償却資産として処理することも認められています。
一括償却資産の場合、3年で割った金額が毎年の減価償却費となります。
③少額減価償却資産の特例
青色申告をしている中小企業者等限定ですが、取得価額が30万円未満の減価償却資産については、年300万円を限度として全額を購入した年の費用として計上できる「少額減価償却資産の特例」を適用することもできます。
※個人事業主は、中小企業者です
少額償却資産の特例の場合、購入した年に購入金額の全額が減価償却費となります。
まとめ
個人でお仕事される方にとって必須アイテムとなっているパソコン。
プライベートでも利用されるため、開業前に取得している方も多いと思いますが、経費にするためには少し手間がかかります。
開業当初の帳簿に不慣れな時に計算するのは骨が折れる作業ですが、がんばって計算してみてくださいね。
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